トルクメニスタンという国をご存知ですか?
近年、日本からの旅行者も増えている中央アジア。
青の遺跡やシルクロードで有名なウズベキスタンは、メディアで取り上げられることも増え、度々「前から行ってみたかった!」と言う声をたくさんいただきます。
トルクメニスタンはウズベキスタンの西に位置する永世中立国。
国土の85%はカラクム砂漠に覆われ、西の端はカスピ海と接しています。
ほかの中央アジアの国々と同様、もとはソ連に属し、1991年に独立。
入国の規制が厳しく、日本からの観光にもビザや旅行会社を通した手配が必要ですが、近年は観光に力を入れており、様々なツアーが見られるようになってきています。
中でも有名な「地獄の門」は、聞いたことのある方もいるのではないでしょうか。
そんなトルクメニスタンへ、今回は3泊4日の旅行へ行ってきました!
ウズベキスタンのヒヴァからトルクメニスタンへ入国し、西から東へ横断、最後はウズベキスタンのブハラへ出国するルートで、旅行記を紹介していきます。
砂漠に赤く輝くガスクレーター ユルタで遊牧民体験もできる「地獄の門」
初日はヒヴァを発ち、国境の町シャワットへ。
国境に入ったら道なりに沿って、各所でパスポートを提示しながら進みます。
ウズベキスタンの出国審査を抜けたらバス待ち。トルクメニスタン側の入国審査所まではバス移動となります。
国境が混んでいない日は出国審査もスムーズですが、一方で、バスの乗客が揃うまでに結構待たされることも…。
トルクメニスタン側まで到着すれば、ガイドさんがお出迎え。
入国審査の手続きは、すべてガイドさんが手助けしてくれます。
それでも、国境が混んでいたり、手続きに時間がかかっている先客がいたりすると、1時間以上はかかる心づもりをしていた方が良いかもしれません。
招待状を提出して無事にビザを貰ったら、いよいよ地獄の門へ出発です。
トルクメニスタンは首都が真っ白な街であることで有名ですが、ここタシャウス州も負けず劣らず白い街並み。
ユルタ型のかわいいイベントホールも見つかります。

街を抜けるとひたすら砂漠。
この辺りはまだ道が整備されてないので、道路のでこぼこを避けるため、どの車も蛇行しながら、時には砂漠の砂地を突っ切りながら進みます。
がたがた大きく揺られながら走る四駆は、さながら遊園地のアトラクション!

地獄の門までは4時間ほど。
冬季はすでに日没が始まっていました。
地獄の門は、1971年、地下資源調査の最中の落盤事故によりできた大きなクレーター。
クレーターからは天然ガスが噴出し、有毒なガスが外へ広がるのを懸念して火をつけたところ、一週間もあれば止まるかと思われたガス噴出は止まらず、今もなお燃え続けている場所なのです。

ただ、年々火の勢いは弱まっているようで、ところどころ黒ずんだ部分はすでに燃え尽きたところ。
なので、実際の火力を見ると予想していたよりも「あれ?」となるかもしれませんが、本当にきれいなのは、完全に日が沈んで真っ暗になった後。

晴天なら満天の星空が見れるほどの暗闇の中、再び地獄の門を見に行くと、燃え盛る炎が赤々と浮かび上がっているのです。
広い砂漠の中、ただそこだけ静かに燃え続ける不思議な光景。
極寒の夜でも、クレーターから風下にいると熱風で温かいほど。
地球のエネルギーを感じるような他では見られない光景、一度は体験できて良かったと思えました。


宿泊は遊牧民の伝統的な移動式住居、ユルタで。
薪ストーブがあり、真冬でもユルタの中は上着を脱げるほど暖かいのですが、1時間おきには薪をくべないといけないので、ユルタ泊が難しければ食堂横の部屋を借りて寝ることもできます。
実際に、自身で夜通し薪を足してユルタで過ごすお客さんもいるとのこと。ぜひチャレンジしてみるのも良いかもしれません。
冬季は屋内の食堂で食事をしましたが、気候が良ければ外のテラスで食事可能。
ここのユルタキャンプにはたくさんの猫ちゃんがいて、お客さんによく付いてきてくれるのも嬉しいポイント。
テラスで食事をしていると、猫とハリネズミがごはんの取り合いをしているのを度々目撃されるそうです。
お手洗いは自分で水を汲んでタンクに足さなければなりませんが、水洗で、清潔な印象でした。
ギネスブックにも登録された大理石の建築群 噂にたがわぬ真っ白な首都アシガバット
地獄の門の翌日は、首都アシガバットへ。
再び四駆で4時間ほど走ります。
風景が砂漠から徐々に住宅街へと変わり、鳥をモチーフにした形が印象的な空港を通り過ぎると、いよいよアシガバットの中心部。

「世界でもっとも大理石張りの建造物が多い街」としてギネスブックに登録された街。
白い街とは事前に知っていても驚くほど、アパート、お店、官公庁、視界に入るものすべてが真っ白!
街を走る車のカラーも、白、シルバー、ゴールドのみ。
ごちゃついた広告も無く、清掃が行き届いており、ポイ捨てする人もいないのでゴミ一つ落ちていません。
毎朝、4000人もの清掃員を投入して掃除しているのだそう。

そしてもう一つ特徴的なのが道路のつくり。
大通りは多くの交差点が環状交差点になっていて、信号がとても少ないのです。
車線も多く、たくさんの車が走っていますが、渋滞になることなくスイスイ移動できます。
街としての機能性や美意識を突き詰めた、とても洗練された首都だと感じました。

アシガバットでの最初の観光は国立博物館。
展示内容や時代ごとに7つの展示エリアからなり、トルクメニスタンの基本情報や文化、紀元前から現代までの歴史がよくまとまった博物館です。
英語の解説パネルもありますが、入場時に希望すれば、英語の解説員を付けることもできます。
多数の展示品から、重要なポイントを押さえて分かりやすく説明してもらえるので、日本ではあまり馴染みのないこの地域の歴史も楽しく知ることができました。


展示品の中でも、一番の目玉はこの象牙のリュトン(儀式杯)。
アシガバット近辺のニサ遺跡から出土したもので、大きさもデザインもさまざま。
細かい破片で出土し、触れるだけで崩れてしまうような状態だったため、周囲の土ごと持ち帰り、見事このように復元されたのだそう。

もう一つぜひ見ておきたいミュージアムが、絨毯博物館。
トルクメニスタンで作られた様々な地域、時代、種類の貴重な絨毯コレクションが一挙に見られます。
入館するとまず、壁三面をおおう巨大絨毯がお出迎え。世界最大の絨毯としてギネス登録もされている絨毯たちは、それぞれ展覧会や独立10周年の際に作られた記念品。
国旗にも、各州の特徴的な絨毯模様が取り入れられているトルクメニスタン。
ここに展示されている絨毯は、作られた州ごとにエリア分けされており、それぞれ見比べやすくなっています。
最初はどれも同じように見えていた模様が、博物館を出るころには「あれは○○をモチーフにした△△州の模様だ!」と分かり、その後のお土産絨毯選びも楽しくなってくるのです。

絨毯についてはこちらの記事でより詳しく紹介しているので、ぜひ合わせてご覧ください!
市内は目を見張るようなモニュメントや近代建築でいっぱい。
95mと圧倒的な高さを誇る「中立の塔」、周囲にトルクメニスタンの歴史的偉人の像を置く「独立記念塔」、巨大観覧車。


重要施設は何かしらのモチーフで建てられていて、例えば教育省は建物全体が本の形、外務省は地球のオブジェが乗っていたり、歯学部の建物は歯の形、化粧品関係のセンターは鏡がモチーフだったりと、芸術的な建築が次々と現れ、写真を撮る手が止まりません。


そしてライトアップが始まると、また違った表情を見せるアシガバットの街。
白い街がカラフルな明かりで照らされ、現地のドライバーさんが「アシ・ベガス」だと冗談を言うのも納得の輝きっぷりでした。

紀元前から残るパルティア王国最初の首都 アシガバットから行ける世界文化遺産「ニサ遺跡」
国立博物館で見たリュトンの出土場所、ニサ遺跡。
アシガバット中心部から車で30分ほどの場所にあります。
紀元前3世紀から400年にわたってイランおよびメソポタミアを支配したパルティア朝の最初の首都がここなのです。
丘陵地を城壁で囲った都市遺跡で、王の居住区だった旧ニサと、市民の居住区だった新ニサに分かれています。

五角形の城壁で囲まれた旧ニサは、城壁の内側へ踏み込むと、細い通路が続き、まるで迷路のよう。
ゾロアスター教寺院や、王の間の跡があり、王の間では当時から残る柱や、玉座跡を見ることができます。リュトンがあったのも、まさにここ。
現地の若い人たちの間では、フォトシューティングスポットとして人気が高まりつつあるそうです。


ニサ遺跡から北東へ進むと、黄金のドームが輝くとても大きな廟とモスクが。
初代ニヤゾフ大統領が、自身の故郷であるこの地に、2004年に建てたものです。
廟にはニヤゾフ大統領、そして両親と2人の兄弟が埋葬されており、国民が日々祈りを捧げに訪れます。
1948年の大地震を幸運にも免れた初代大統領。そのエピソードをもとに、初代大統領の母が地震から我が子らを守る彫刻も飾られています。
モスクは1万人もの人が同時にお祈り可能な規模。
外観の美しさはもちろん、内装の彫刻や絨毯、シャンデリアの見事さは、思わずため息がこぼれるほど。
特徴的なのは、多くのモスクで見かけるアラビア文字の装飾のみならず、初代大統領の著書「ルフマナ」からの引用が、トルクメニスタンのアルファベットでドームの内側に記されているのです。
自国の宗教や歴史の教えが制限されたソ連時代、歴史教育が失われるのを憂慮してルフマナを書き上げた初代大統領への尊敬の念により、このようなデザインとなっています。


中央アジア最大級の世界遺産 様々な時代と宗教が入りまじるシルクロードの要衝「メルブ遺跡」
アシガバットを2日間観光したら、3日目夕方にはマリ州へ(車で約3時間)。
最終日は、マリ州にある世界文化遺産、メルブ遺跡を周ります。
マリの市内から車で30分ほどで、開けた広大な土地の中に、遺跡が点々と遠目にも見え始めます。
中央アジア最大規模とされるメルブ遺跡は、かつてシルクロードの要衝として栄えたオアシス都市で、紀元前6世紀から18世紀と様々な時代、そして様々な宗教の痕跡を残す遺跡です。
もっとも古いのは、アケメネス朝時代の城塞エルク・カラ。
現在は城壁跡が残るだけですが、小高い丘のようになった城壁に登ると、エルク・カラ全貌、そして反対側には後の時代のギャウル・カラ全貌が見渡せます。

エルク・カラの名前の由来は諸説あるようですが、高い税金に苦しんだ当時の国民が暴動を起こし、鎮圧のために派遣された軍によって55万人もの人が殺害されたことから、自由のために戦ったとして「自由の城」になった、というような心打たれる話も。

隣り合うギャウル・カラは「異教徒の城」。
後にやってきたイスラム教勢力から見た「異教徒」のことで、当時ここにはゾロアスター教、キリスト教、仏教など様々な宗教が栄えていたとのこと。
7世紀にイスラム教の支配が広がってできたのが、柱を並べたような独特の城壁が面白いキズ・カラ。
大小2つの建物からなり、伝説では、大きい方は女性(ハーレム)用、小さい方は軍人などの男性用とされています。


ここにまつわる逸話では、王が適齢期の男性を小キズ・カラに集め、大キズ・カラの城壁内までリンゴを飛ばせた者に好きな女性と結婚する権利をやろうと、腕試しをさせたとのこと。
しかし現地で距離感を見たところ、どう考えても届くとは思えない遠さ。
本当にそんなことができたのかとガイドさんに聞いたところ、投石器を使ったのではないかといわれているそうです。

大キズ・カラ内は地下、1階、2階からなり、地下の井戸跡はきれに保存され、現在も調査を進めている様子が見られます。
イスラム教時代の支配者の遺構として、セルジューク朝最盛期の王、スルタン・サンジャル(1118~1157)の廟もあります。
メルブ遺跡は13世紀モンゴル軍来襲時に壊滅状態になり、またソ連時代の大地震によって多くの遺跡が損壊を受けていますが、このスルタン・サンジャル廟はそれらを免れた廟なのです。
損壊部分はトルコの支援も受けて修復されています。

ここにも、スルタン・サンジャルにまつわる面白い伝説が。
美しい女性と出会ったスルタン・サンジャルは結婚を申し出ますが、女性の出した条件は「私が髪をとくときは髪を見ないでください。私が歩くときは足を見ないでください」というもの。条件をのんだスルタン・サンジャルでしたが、好奇心に負けて髪と足を見てしまい、、、という物語。

ぜひ、美しい廟を眺めながらガイドさんに続きを聞いてみてください。
ほかにも、預言者ムハンマドの良き理解者でありイスラム教の普及に努めた2人が眠る15世紀建築の廟や、11~12世紀にかけてのイスラム教の学者が眠る廟は、今も現地の人々がお祈りに訪れる巡礼地となっています。


紀元前から始まり、現代も巡礼や観光で多くの人々が訪れるメルブ遺跡、トルクメニスタンの歴史の深みをどっぷり体感できる場所でした。
ウズベキスタンのブハラへ出る国境の町ファラップまでは、ここから車で4時間半。
出国手続きまで、ガイドさんもしくは現地スタッフさんが付き添ってくれるので、最後まで安心して旅行を楽しむことができました。
トルクメニスタンで食べたいおすすめグルメ
首都アシガバットには、ユルタ型のレストランがあります。
ここで食べたのはドゥグラマ。
肉、玉ねぎ、パンなどが具材になったスープ料理で、この料理のポイントは具材を手でちぎって作ること。
パンのお粥といった感じの食べやすさと、お肉の旨味がきいたシンプルなスープは、日本人の口に合うこと間違いなし。


中央アジア全域で「アイラン」と呼ばれる、塩気のきいたヨーグルトのような飲料が見られますが、
ラクダの多いトルクメニスタンでは、多くの場所でラクダの乳のアイランを飲むことができます。
特に臭みなどもなく、さっぱりとしていて、暑い夏や、脂っこい料理のあとに飲みたくなるような味わいでした。

地獄の門のユルタでは、炭火焼きの串焼き肉「シャシリク」や炊き込みご飯「プロフ」を食べたり、アシガバットでは、ホウレン草やお肉を包んだパイ生地パン「サムサ」を作るところから見学したり、中央アジアで一般的な料理もひと通り楽しめます!


日本語サポート可能!ウズベキスタンから訪れるトルクメニスタンツアー公開中!
SRP Travelでは、ブハラ発ヒヴァ着のトルクメニスタン4日間ツアーを開催中!
今回のブログの行程とは反対周りになりますが、同様の観光地を訪れることが可能です。
【ブハラ発着】トルクメニスタン4日間ツアー | ウズベキスタン現地旅行会社 | SRPTRAVEL
また、ヒヴァ発着の1泊2日で、地獄の門を訪れるツアーも取り扱っております!
ウズベキスタン周遊旅行の中に、2日間だけトルクメニスタンへ足をのばしたい方へもおすすめです。
※現在、2025年5月4日発 もしくは 5月5日発で、地獄の門への混載ツアー募集中です!
お一人のみでの催行よりも、混載であれば1人あたりの料金がお安くなります。ぜひ、お問い合わせお待ちしております!
【ヒヴァ発着】トルクメニスタン・地獄の門一泊二日ツアー | ウズベキスタン現地旅行会社 | SRPTRAVEL
いずれのツアーも、ご希望の日程に合わせて承ることができますので、気になった方はお気軽にご相談くださいね。
まだまだ観光情報が少なく、多くの人にとって未知の国のトルクメニスタン。
ですが、ほかの中央アジアの国々とはまた違った街並み・自然・文化・歴史は、一度は肌で体感してほしい面白さ!
ぜひ、ご旅行の参考にお役立てください。
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