ホラズム地方に点在する遺跡「カラ」。
アムダリヤ川の下流域にあたるホラズム地方は、古くから交易の中継地として栄えており、紀元前4世紀には高度な文化をもっていたとされています。
各地に都市が形成され、その都市を囲むようにつくられた城塞が「カラ」です。
古代ホラズムの王国の名残で、この辺りには「○○カラ」と名の付く地名や遺跡が多く残っています。
規模が大きく、海外からの観光客も多い「アヤズカラ」は耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
それ以外にも、ホラズムには面白いカラがたくさん!
今回は、近年新たな観光地として注目されはじめたカラもご紹介。
カラカルパクスタンの首都ヌクスからスタートして、見応え抜群の主要なカラを一緒に巡っていきましょう。
ホラズムに残るゾロアスター教遺跡 チルピック・カラ
ヌクスから南東へ40~50km走った先に見えてくるのはチルピックカラ。
他のカラとは異なり、ここは城塞としてつくられたものではありません。
1~4世紀、ゾロアスター教時代につくられた、鳥葬のために遺体を置く塔、ダフマだった場所です。
のちに、16世紀のヒヴァ・ハン国時代には、塔の上で火を灯し、敵国襲来のシグナルをおくる場所としても使われたそう。
入り口には、受付所としてのユルタがお出迎え。
現在は地域住民の巡礼地となっているようで、長い階段と足元の不安定な岩場を、力強く登っていく高齢の方々もちらほら。
平地の中にポツンとそびえる丘の上からは、アムダリヤ川を一望できる爽快な景色が広がります。
夕日に染まる見事な城壁 キジル・カラ
さらに南東へ向かった先にはキジルカラが。
直訳すると「赤い城塞」。日没の時間帯に、夕日で赤く染まることから付けられたとか。
キジルカラがつくられたのも、チルピックカラ同様1~4世紀。
その後、12~13世紀のモンゴル襲撃時に再建されました。
ほぼ正方形の敷地は、小窓のたくさんあいた厚い城壁で囲まれ、まさに城塞らしい風貌。
1938年の考古学の調査によって、城壁が二重であったことや、要塞の隅には物見やぐらがあったことも明らかに。
ここは、近くにあるトプラクカラの防御を固めるための要塞だったとされています。
トプラクカラとキジルカラは地下通路で結ばれていた、なんていう伝説もあるそう。
城壁の狭間からのぞく広大な景色にも、心が満たされて。
大地の砂色と、農地の鮮やかな緑とのコントラストに魅せられます。
迷路のようなホラズム王宮跡 トプラク・カラ
キジルカラのすぐ近くにあるのはトプラクカラ。
1~6世紀のもので、かつてここに存在した古代都市の中心地であり、2~3世紀はホレズム王の居住地として使われていたそう。
都市の面積は120ヘクタール。東京ディズニーランド2~3個入るほどの、栄えた場所であったことがわかります。
王宮の外側には、2500人が住めるような住宅地があり、ゾロアスター教の寺院などもあったとのこと。
キジルカラ含め、多くの古代ホラズム文明は、考古学者セルゲイ・パブロビッチ・トルストフによる1938年の調査で発見されています。
トプラクカラもその一つです。
ここでは多くの遺物が見つかっており、壁画や装飾品、彫刻や陶器などの破片、さらには葡萄畑があったこともわかっているのだとか。
見晴らし抜群の大きな丘の上に広がる宮殿跡。
宮殿内の部屋数は、ゆうに100を超えるほどだったそう。
格子状に区切られた迷路のような壁が状態良く保存されており、カラの中でも特に当時へタイムスリップした気分を味わえます。
ヒヴァの世界遺産、イチャンカラ内のクフナ・アルクには、トプラクカラのミニチュア模型も展示されています。
そちらも合わせて見ると、より構造が分かりやすいでしょう。
古代ホラズム最大級の城塞 アヤズ・カラ
トプラクカラを出て北東へ。
アヤズカラは、古代ホレズム遺跡の中でも規模が大きく、3ヶ所の城塞に分かれています。
アヤズカラ1
アヤズカラ1は、とりわけ小高い丘の上の城塞。
紀元前4~3世紀につくられ、1世紀頃まで城塞として使用されており、中世の初期には地元の人々の避難場所としても使われていたようです。
広大な長方形の敷地を、二重の城壁がぐるっと取り囲み、その壁と壁の間には、天井がアーチ形の回廊がつづいています。
外壁には矢を射るための小窓が多数あり、これらは雨どいとしての役割もあったそう。
遺跡のスケール感と、眼下に広がる壮大な景色に圧倒される、そんなスポットです。
アヤズカラ2
アヤズカラ2は、アヤズカラ1の隣の小ぶりな丘の上、がれきのような岩場を登った先にあります。
こちらは7世紀前後に建てられたものです。
アヤズカラ1よりも小さく、楕円の形をしています。
目の前にそびえ立つ日干しレンガの巨大な城壁と、足元の急斜面にドキドキハラハラ。
一番上まで登りきると、開けた視界にアヤズカラ1の全景が際立つ見事な景色が。
アヤズカラ2はさらに、城塞の門から下方へ向かった平原の、大きな宮殿跡へつづきます。
アヤズカラ3
アヤズカラ1の前の平原にあるのがアヤズカラ3。
最も古く、紀元前5~4世紀に建てられたとされています。
現在残っているのは、平行四辺形の城壁と監視塔のみ。
ほかの2つの要塞と比べると、あまりよく保存されているとはいえませんが、面積5ヘクタールと最も広いのは、このアヤズカラ3です。
すぐ近くには、宿泊可能なユルタキャンプも。ユネスコのサポートを受けてオープンしているとのこと。
古代ホラズム巡りに合わせて、遊牧民の生活体験やラクダ乗馬体験も、ぜひお楽しみください。
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近年注目を集める最新リゾート地 カラジク・カラ
最後はカラカルパクスタンを抜けて、ウルゲンチからさらに南、トルクメニスタン国境付近まで。
現在ホラズムで開発中の新しい保養地、カラジクカラ。
約3000年の歴史をもつというカラジクカラは、近年新たに注目されるようになったカラであり、まだ詳細に分かっていないことも多いよう。
城壁の中は、ユルタなどの人工物の残骸がまばらに残されており、人がいなくなって荒廃したディストピア的な雰囲気を漂わせています。
湧き水によってできた湖で取り囲まれているカラジクカラの城塞。
この湖の水は腰痛や関節痛に効くとして、古くから人々の保養所だったという話も。
湖を取り巻く砂漠にはパラソルが並び、海辺のリゾートのような光景。
現在はレストランやコテージが完成しつつある様子。
水辺に浮かぶコテージには屋外キッチンもついており、グランピングもできそうです。
海のない二重内陸国ウズベキスタン、砂漠の地ホラズムで楽しむ水辺のリゾートは、とびきり贅沢な気分に浸れることでしょう。
この観光地開発計画は、ホラズム地方への観光客を増やし、地域住民の雇用創出にもつながるとのこと。
イチャンカラ訪問がメインのホレズム観光。今後さまざまな観光スポットが増える可能性があり、ますます楽しみになりますね。
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